研究概要 |
近年、従来の冠血行再建術では治療困難な瀰慢性冠動脈病変による慢性心筋虚血に対し、レーザー心筋内血管新生術(TMR)や血管新生因子の心筋内注入法が期待されているが、その治療効果については未だ充分に検討されていない。本研究では、TMRと血管新生因子の一つであるhepatic growth factor (HGF)の心筋内注入法の有用性について動物実験による検討を行った。 【対象及び方法】ビーグル犬の第一対角枝分岐直後の左前下行枝(LAD)を結紮して慢性心筋虚血モデルを作成。一カ月後にLAD領域にTMR,HGF心筋内注入法、両者併用、を施行し、各々の術後一カ月後にmicrosphereを用いて局所心筋血流量を、ドブタミン負荷心エコーを用いて局所心機能(心筋壁厚の変化率)を、proliferating cell nuclear antigenを用いた免疫染色により新生血管の増生程度を、検討した。 【結果】(1)TMR,HGF心筋内注入法ともにLAD領域における心筋血流量の増加、心機能の改善、新生血管の増生が得られたが、その程度はいずれもTMRに比しHGF心筋内注入法においてより高度であった。(2)また、TMR単独に比しTMR・HGF心筋内注入法併用でより一層の局所心筋血流量の増加と局所心機能の改善が得られた。 【まとめ】瀰慢性冠動脈病変における慢性心筋虚血に対し、TMR,HGF心筋内注入法ともに局所心筋血流を増加させ、局所心機能を改善させたが、その程度はTMRに比しHGF心筋内注入法でより顕著であった。また、両者の併用によりより一層の治療効果が期待されるものと思われた。
|