研究概要 |
我々は以前より臓器移植の究極の目標は免疫寛容による臓器移植であると考え、九州大学生医研免疫部門野本研究室と共同研究を行い、1982年よりマウスにおけるCyclophosphamide(CP)誘導性免疫寛容を開発発展させてきた。その成果をこれまで40報以上の英文論文に報告してきた.この実験系の特徴は、系自体が単純であり再現性にすぐれていることであるが、MHC抗原は一致しマイナー抗原のみ違う組み合わせでは皮膚移植片寛容状態とキメラ状態が誘導される(1984,Transplantation)ものの、MHC抗原の違う組み合わせでは一時的キメラ状態と中等度皮膚片生着延長が誘導される(1985,Transplantation)ことである。この実験系を応用し、CD4,CD8及びCD45ノックアウトマウスを用い、Discordant異種であるhuman皮膚片をそれぞれのマウスに移植しT細胞の拒絶反応機序を解析した.その結果、CD4+T細胞がDiscordant異種移植片の急性拒絶におけるmain effectorであること、CD8+T細胞そのものでは急性拒絶を生じることは出来ないが拒絶を生じさせる能力を有することが明らかとなった.さらにCD45ノックアウトマウスを用いた解析によりIndirect pathwayのみならずDirect pathwayにより生じるeffectorにより異種皮膚片を拒絶出来ることが明らかとなった(T.Uchida,Y.Tomita,Two manuscripts submitted sor publication).我々は免疫寛容による臓器移植が究極の臓器移植の目標であると考えてきた.その第一歩は、マウスにおいてMHC抗原の壁を越えて同種皮膚移植片に対する免疫寛容実験系を確立することであり、近年の研究により免疫寛容実験系を確立することが出来た.マウスレベルにおける次の研究は異種への免疫寛容系の誘導の開発である.concordant異種としてラット→マウス、discordant異種としてラット→αGalノックアウトマウス(超急性拒絶反応が生じる)を用いることにした.マウスで確立された実験系を応用し我が国独自の免疫寛容誘導系を開発してゆく予定である.
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