手術により切除された肺癌組織を用い、各種増殖因子の発現とその生物学的意義についての検討を続行中である。平成10年度は、非小細胞肺癌における肝細胞増殖因子(HGF)の発現を、新しく開発されたenzyme-immunoassayにて測定するとともに、免疫組織染色にて解析した。その結果、腺癌の亜型である細気管支肺胞型腺癌(BAC)のdiffuse-typeのHGF濃度は265.0±110.2(ng/100mg protein)であり、これはsolitary-typc BAC(13.9±15.9)、通常型腺癌(13.8±14.9)、扁平上皮癌(13.2±14.4)、大細胞癌(11.2±6.5)に比し、有意に高濃度であった。また、免疫組織染色においても、diffuse-type BACは癌細胞にHGFの強発現を認めた。このことは、diffuse-type BACは、他の非小細胞肺癌とは異なる疾患単位と見なすべきであることを示唆している。また、diffuse-type BACは予後不良であることが知られているが、HGFの発現がその一因をなしていると推測された。
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