平成11年度は、外科的に切除された非小細胞肺癌および小細胞肺癌組織から抽出液を作製し、新しく開発されたenzyme-immunoassayを用いて、血小板由来血管内皮細胞増殖因子(PD-ECGF/thymidine phosphorylase)濃度を測定した。非小細胞肺癌のPD-ECGF濃度は、腺癌組織73例が30.7±22.9(U/mg protein)、扁平上皮癌組織49例が32.0±19.8であり、両群間に有意差はみられなかった。一方、小細胞肺癌組織17例のPD-ECGF濃度は3.65±2.01であり、非小細胞肺癌に比し有意かつ著明に低濃度であることが判明した。癌組織における血管新生は癌の浸潤・転移に極めて重要な役割を果たしていると考えられる。今回の結果から、小細胞肺癌と非小細胞肺癌は異なる血管新生のメカニズムを有していることが推測された。また、近年血管新生因子のインヒビターを用いた癌治療が試みられているが、PD-ECGFに対するインヒビターは小細胞肺癌に対しては有効性を期待できないことを本研究の結果は示唆している。
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