本年度は実験方法の詳細な検討を施行し、その結果若干の実験方法の変更を行った。新しい方法に必要な消耗品を購入し、平成11年度から実験を開始する予定である。実験モデルとして当初はビーグル犬を使用する予定であったが、イヌの場合、前脊髄動脈がヒトと同様に胸椎レベルから起始しているために開胸して胸部大動脈を遮断する必要があること、また胸部大動脈遮断を行った場合、腹腔内臓器の虚血を来たす可能性があるため、検索した範囲ではイヌが脊髄虚血モデルとして使用されることは少ないようである。ウサギは前脊髄動脈が腹部大動脈から起始しており、また腰椎が第7腰椎までと長く、開腹して腎動脈下での腹部大動脈の単純遮断にて容易に脊髄虚血モデルを作成できるため、今回の実験ではウサギを使用することにした。くも膜下腔灌流法にくわえて、脊髄保護液の開発も行うことにした。すなわち、大動脈を遮断し、動脈内に直接に脊髄保護効果の可能性のある薬液を注入し、前脊髄動脈を通して薬液を脊髄に反応させることで保護効果を得るものである。今回検討する薬液はnucleoside transport inhibitorの一つで、内因性のアデノシンを増加させるKW3902とselective A1 receptor antagonistであるKW3902である。 ・手術手技・・・手術は清潔操作で行う。全身麻酔下に仰臥位にて気管切開による気管内挿管を行い、人工呼吸器による呼吸管理を行う。次いで仰臥位とし頚椎および腰椎の部分椎弓切除を行い硬膜外カテーテル電極を留置する。再度、仰臥位に戻してから、開腹を行う。腎動脈下と腹部大動脈分岐部直上の2箇所で腹部大動脈を血管鉗子で40分間遮断し、脊髄虚血モデルを作製する。 ・実験方法・・・4群に分け、コントロール群(6羽)、KW3345投与群(6羽)、KW3902投与群(6羽)に分ける。コントロール群は単純遮断のみ。KW3345投与群は大動脈遮断直後に遮断した腹部大動脈内にKW3345を動注する。KW3902投与群はKW3345投与群と同様の手技を行うが、大動脈遮断30分前にKW3902を静注する。この間連続的に脊髄誘発電位を測定志、その波形の遅れや高さの変化で脊髄保護効果を検討する。実験終了後、対麻痺の程度にたいし神経学的評価を行う。その後、静脈麻酔で安楽に犠牲死させた後、腰髄を摘出し、病理学的検討を行う。 以上が今回の実験計画である。 以上、当初の計画と若干の変更があり、現在、実験準備段階であるが、科研費により動物、実験設備が全て揃い次第、直ちに実験を開始する予定である。
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