研究概要 |
今年度は,予備実験として安定した胸腔内空冷法を確立すべく,胸腔内空冷による肺組織温(末梢気道温度と肺表面温度)及び胸腔内温度の変化について検討した.胸腔内空冷にはドライアイスによる冷気を用い,仰臥位にしたイヌの左胸腔背側へ留置したチューブよりコンプレッサーにて吹送した.左胸腔腹側には,胸腔内へ貯留する冷気を脱気するためのチューブを留置した.心停止後,気管内挿管チューブより室温の100%酸素を流入させ肺を膨張させた状態で挿管チューブを遮断し,in situにて室温下に放置した.胸腔内を空冷すると胸腔内温度の下降は速やかで,約30分で15℃,約50分で4℃となり,以後120分まで0℃程度に維持された.尚,吹送冷気の温度は約-15℃であった.それに伴い,末梢気道温度は徐々に下降し(30分毎に約5℃下降),120分の時点で約19℃となった.一方,肺表面温度は末梢気道温度より低く推移し,120分で約10℃となった.各肺葉での肺表面温度に差は無く,均等に冷却が得られることが判った.また,肺は凍結することもなく,胸腔内は湿潤に保たれ,胸腔内への生食水の噴霧は不要であった.しかしながら,冷気吹送用のチューブ内に凍結片が生じ,一時的に冷却が困難となることがあった.冷気吹送のコンプレッサーの条件や吹送用チューブの形状を変更することで改善が得られるのではないかと考えている.現在,この結果を踏まえて更なる適切な冷却法を検討しており,その後に本実験に着手しようと準備中である.
|