呼吸循環機能不全に陥った患者の治療に用いられる長時間にわたる循環呼吸補助を目的とする、いわゆるECMO(Extracorporreal Membrane Oxygenation)装置では、従来は血液ポンプの駆動源と、人工肺に供給する混合ガスは別途のものである事が前提であり、両者を1元的に統合し小型化を実現できる方法、および装置はなかった。これらを一元的に解消するための一つの方法として、本研究では、人工呼吸器を駆動源として想定した空気圧駆動型血液ポンプと、人工呼吸器から酸素加混合ガスの供給をうける膜型人工肺を一体化した小型ECMO装置をめざした研究を行った。 人工呼吸器を膜型人工肺および血液ポンプを構成する血液ポンプ駆動部分に接続し、流入側弁、および流出側弁を血液ポンプに装着した。人工呼吸器が酸素加混合ガスを送気する時相においては、膜型人工肺に酸素加混合ガスが供給されると同時に、ベローズが押されることで、血液ポンプは血液を駆出し、人工呼吸器の呼気相においては、ポンプのベローズからの排気が、内蔵したバネのエネルギーで行われ、同時に膜型人工肺に酸素加混合ガスが供給される。この場合の主な問題点は、血液ポンプの拡張期に陰圧となった血液ポンプ部が膜型肺から混合ガスを吸引する可能性がある点であった。実験では人工肺部とポンプ部は切り離した。人工呼吸器の駆出する混合ガスがベローズ内のバネの駆動源であり、ベローズからの排気は、バネのエネルギーで行われるようにした。このポンプの流出側弁の下流に膜型人工肺を接続した模擬回路による実験では、血液ポンプの拡張期における血液相へのガス吸引は見られなかった。また混合静脈血酸素分圧が60〜70%程度の調節呼吸下、自己心拍出量の保たれた動物実験では、人工呼吸器で純酸素送気した場合、良好な酸素加が見られた。
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