研究概要 |
1. 開心術中の輸血合併症の認識から乳児・複雑心奇形まで無輸血開心術の適応が拡大されているが、無輸血治療の完結には術後出血のコントロールが重要である。高度血液希釈体外循環が血液凝固機能に及ぼす影響を臨床例において検討した結果、高度血液希釈を伴う無輸血体外循環でThrombinAntithrombn complex,D-dimerの上昇(凝固系の活性化)が見られ、Antithrombin III(ATIII)の濃度低下のためヘパリンの効果が不十分である可能性が示唆された。その結果、体外循環が長時間に及ぶ場合、術後に血液凝固障害がおこり出血増加の原因となり得る。高度血液希釈を伴う体外循環中は、ATIIIに依存しない抗凝固療法を併用する方が安全と思われた。 2. 近年、体外循環(以下CPB)時、ヘパリン被覆回路の生体適合性については多くの検討が行われ、その有用性が多数報告されている。我々はヘパリン被覆をせず、HEMA(hydroxyethylmethacrylate)とStyreneのブロック共璽合体によって回路内面をミクロドメイン構造に加工した体外循環回路を用いその生体適合性について検討した。結果、血液凝固系の活性化においては差を認めなかったが、血小板数ではミクロドメイン加工によって温存される傾向が認められた。また、ミクロドメイン加工によってrecirculation後の回路充填夜中のブラジキニンの活性化が抑制された。ミクロドメイン構造に加工した体外循環回路は、血液接触系の活性化抑制を期待できる方法として有用であると思われた。
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