血管新生抑制による悪性神経膠腫の治療-臨床応用への分子生物学的機序解明-

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10671282
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 高野 晋吾 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (50292553)
• 研究分担者: 三井 洋司 工業技術院, 生命工学技術研究所, 首席研究官 ; 坪井 康次 筑波大学, 臨床医学系, 講師 (90188615) ; 奥田 諭吉 筑波大学, 臨床医学系, 助教授 (60211132)
• キーワード: 血管新生 / 神経膠腫 / VEGF / Theobromin / Pentoxifyllin / クラニアル・ウィンドウ / Thrombospondin / Interferon-β

研究概要

1)内因性血管新生因子の利用:Thrombospondin-1(TSP1)発現plasmid DNA(pcDNA TS1)を神経膠腫細胞に強制発現させることを計画した。2つの問題点があり現在も施行中である。1つはTSP1に対する抗体が手にはいらなくなり、強制発現させた場合の検出方法が不十分になったこと、2つめはTSP1発現の低い神経膠腫細胞(Becker)に発現を試みたが、Beckerはin vivoで腫瘍を形成せず、in vivoの効果を見るために不十分であった。腫瘍形成能のあるU87細胞で実験をくり返している。また、interferon-βの神経膠腫細胞への投与は、血管新生抑制因子であるIP10を誘導するだけでなく、血管新生因子であるVEGFの産生を抑制し、強力に神経膠腫による血管新生を抑制した(Jpn J Cancer Res,1999)。現在、U87細胞皮下腫瘍モデルでの血管新生抑制および腫瘍増殖抑制効果を検討中である。
2)外因性血管新生抑制物質の利用:VEGF promoter activityを抑制するthrombospondin,genistein,mithramycinに加えて、theobrominがpromoter activityを抑制すること、pentoxyfillinがVEGFのmRNA発現および蛋白産生を抑制すること、両者が神経膠腫が誘発する血管内皮細胞の遊走を抑制することが明らかにされた。これらtheobromin,pentoxyfillyinは現在すでにほかの用途で、ヒトに投与されている経口薬であり、in vivoでの効果を検討している。
3)Mouse Cranial Window Modelを用いたintravital tumor microcirculationの評価で上記血管新生抑制物質の効果を判定している。Modelの確立が難しく、正常脳のmicrocirculationの評価を終えたところである。U87腫瘍片を移植したtumor microcirculationの評価を施行中である。
4)論文の5、9および図書の4の作成、校正を行った。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki K,Takano S,Nose: "Increased concentration of vascular endothelial growth factor (VEGF) in chronic subdural hematoma."J Trauma. 46. 532-533 (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾、坪井康次、趙 大文、松村 明、伴野悠士、能勢忠男: "髄膜腫と神経膠芽腫における血管新生の分子病理学的差異"Brain Tumor Pathol (supple). 16. 47 (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾、坪井康次、鯨岡祐司、佐藤博明、伴野悠士、能勢忠男: "神経膠腫の放射線照射後2ヶ月で占拠性種瘤を呈した1例"Brain Tumor Pathol (supple). 16. 115 (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾、盛武 敬、坪井康次、松村 明、八代 亨、伴野悠士、能勢忠男: "甲状腺分化癌脳転移の5例"ニューロ・オンコロジー. 9. 23-28 (1999)
• [文献書誌] Takano S,Tsuboi K, Matsumura A, Tomono Y, Mastui Y, Nose T: "Expression of the angiogenic factor thymidine phosphorylase in human astrocytic tumors"J Cancer Res Clin Oncol. (in press). (2000)
• [文献書誌] 高野晋吾、坪井康次、松村 明、能勢忠男、三井洋司: "Interferon-βによるグリオーマの血管新生抑制:IP-10の発現誘導とVEGFの産生抑制"Jpn J Cancer Res (supple). 90. 237 (1999)
• [文献書誌] Takano S, Tsuboi K, Matsumura A, Mastui Y, Nose T: "Inhibition of VEGF promoter activity in glioma"Neuro-Oncol. 1. S97 (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾、坪井康次、松村 明、伴野悠士、能勢忠男: "Gliosarcoma の血管新生能、腫瘍血管の微細構造"Jpn J Clin Electron Microsc (supple). 32. S68 (1999)
• [文献書誌] Takano S, Tsuboi K, Tomono Y, Mitsui Y, Nose T: "Tissue factor, osteopontin, αv3 integrin expression in microvasculature of gliomas associated with vascular endothelial growth factor expression"Br J Cancer. (in press). (2000)
• [文献書誌] 高野晋吾: "Dysembryoplastic neuroepithelial tumor (DNT)"日本臨床 1999年別冊、神経症候群。(in press). (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾: "神経節膠腫(Ganglioglioma)"日本臨床 1999年別冊、神経症候群。(in press). (1999)
• [文献書誌] 高野晋吾: "未分化神経節膠腫 (Anaplastic ganglioglioma)"日本臨床 1999年別冊、神経症候群。(in press). (2000)
• [文献書誌] Takano S, Tsuboi K, Matsumura A, Nose T: "Molecular mechanism of glioma angiogenesis. Recent Research Developments in Cancer."Transworld Research Network (in press). (2000)