研究概要 |
MAP kinase(mitogen-activated protein kinase)にはERK、p38、JNK(c-Jun N-terminal kinase)の3つの群が存在することがしられている。これらの細胞内情報伝達系は各種ストレス、熱ショック、cytokineによって活性化され、種々の分化、増殖、細胞死(アポトーシス)に関与しているといわれる。特にERKは細胞の増殖に、JNKは細胞死に重要な役割を果たすと考えられている。近年の研究では、培養細胞を用いた低glucose、低酸素条件下でERKが細胞保護的に作用することも知られ、これらの因子とP13 kianase,Aktなどとの関係も詳細に報告されてきている。本研究では脳虚血による神経細胞障害にMAP kinaseが関与しているか否かを明らかにすることを目的とした。 遅発性神経細胞死の生じるラットの一過性前脳虚血モデルを用い、ERK,p38,JNKのリン酸化が、神経細胞死に至る過程でどのように変化するかを検討した。最も虚血に脆弱な海馬CA1と、細胞障害の生じない海馬CA3+歯状回、皮質の3カ所において、Wetern Blottingにてリン酸化を検討した。ERKのリン酸化はすべての部位で再灌流5分後に最大に達した。p38のリン酸化は虚血30分でCA1にてわずかに上昇していた。一方、JNKのリン酸化は、虚血後30分より3時間の間で上伝達系蛋白のリン酸化が生じていることが明らかとなり、虚血性神経細胞死との関係を強く示唆する結果を得た。今後は、各部位別でのリン酸化の定量、また、活性の測定、免疫組織学的検討を詳細に加える予定である。
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