脳血管障害・重症頭部外傷後の意識障害は従来視床下部や脳幹部の機能異常とされ、またそれに伴う急性肺水腫や心電図異常については交感神経系の異常興奮とされてきた。近年発見されたPipuitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide(PACAP)はVasoactive Intestinal Polypeptide(VIP)の一員で、視床下部・海馬・脳幹部等に局在し、その受容体は脳内全ての神経細胞・膠細胞に存在するため重要な役割を担っていると思われる。そこで脳血管障害・重症頭部外傷後の視床下部・脳幹部の機能障害を捉える指標として、ラットくも膜下出血モデルを用いて経時的に視床下部におけるPACAPの組織内濃度、脳幹部のPACAP受容体のmRNAの発現を測定した。従来抽象的に表現されてきた視床下部・脳幹の機能障害をペプチド産生及び受容体発現といった面から検討した。 その結果PACAPの視床下部内組織濃度はSAH投与後減少がみられた。また脳幹部ではmRNAの発現は減少していたが、増加している部位もあった。PACAPのreleaseが低下することで脳幹部の機能障害が生じる一機序となっている可能性が示唆された。PACAPはラットの中大脳動脈閉塞モデルにおいて虚血後の神経保護作用が報告されているが、今後くも膜下出血モデルに投与することで脳幹部の各部位のmRNAが正常化するか確かめる。
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