研究概要 |
悪性神経膠腫細胞株U251、T98G、U373の3種類を用いて、抗癌剤であるACNU、CDDP、VP-16を投与し経時的に死細胞数を測定し、アポトーシスをヘキスト33258を用いて蛍光染色で同定した。同時にカスパーゼ3(Casp-3)のWestern blot法およびカスパーゼ3の活性化を測定した。さらに、PARPの限定分解をWestern blot法で確認した。その結果、U251とT98GでVP16の投与において多数の腫瘍細胞がアポトーシスに陥った。投与後、一過性にCASP3の増加がみられ、その低下と共にカスパーゼ3の活性化がおこり、同時期にPARPの限定分解が認められた。その後、多数の腫瘍細胞がアポトーシスに陥るのが観察された。なお、Casp-3の活性化は細胞の核内で主に観察された。CDDPの大量投与ではU251がアポトーシスに陥った。また、ACNU投与では、U251、T98Gで細胞死が観察されたが、おもにネクローシスであった。以上から、悪性神経膠腫細胞株における抗癌剤誘導の壊死誘発遺伝子のカスケードの一部として、ProCasp-3の細胞質内増加、Casp-3の活性化が生じ、核内に移行後のPARPの限定分解が起こり、引き続きアポトーシスが生じることが判明した。Fas,FasLは抗癌剤投与による壊死誘発には直接関与しないと考えられた。Casp-2はCDDP投与後から少し増加する傾向は示したものの有意差はみられなかった。今後は、手術摘出標本において観察される壊死巣のnatural cell death pathwayにおけるFas/FasL,Casp1,2,3およびPARPの限定分解を解明する。さらに、マウスを使用し壊死誘発遺伝子の導入を試みる。
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