神経膠芽腫の壊死巣は大壊死巣(large necrosis)と小壊死巣(pseudopallisading)に分類される。本腫瘍における異なる壊死巣の機序が同定できれば、これを利用した治療の開発に結び付く可能性が考えられる。2種類の壊死巣形成機構とdeath receptor/death ligandの解析により、この機序を利用して治療に結び付けることを目指し、壊死原因遺伝子の解析をおこなった。 神経膠芽腫の手術摘出材料10例において、小壊死巣と大壊死巣をそれぞれ認める5例づつを選び、壊死誘発遺伝子発現細胞の局在をTUNEL法、免役組織化学療法を用いて検討した。あわせて、RT-PCR法を用いて、TRAIL、DR4、DR5、DcR2、DcR3のmRNAの発現を検討した。抗体はFADD、Fas-L、TRAIL、DR4、DR5、DcR1、DcR1、DcR2、プロカスパーゼ3、活性型カスパーゼ3、プロカスパーゼ9、チトクロームCおよびPARPに対する抗体を使用した。結果はFADD、Fas-L、TRAIL、チトクロームCおよびPARPが全症例において、壊死巣とは関係なく大部分の腫瘍細胞に発現がみられた。DR4は血管内皮細胞に発現がみられた。DcR1、DcR2、プロカスパーゼ9は一部の症例で腫瘍細胞に発現がみられた。DR5は大壊死巣の周囲の腫瘍細胞に発現がみられ、プロカスパーゼ3および活性型カスパーゼ3は小壊死巣の周囲の細胞に発現がみられTUNEL陽性のアポトーシスをきたした細胞と使い関係を示した。DR5とTRAIL発現細胞の局在は、FasとFas-Lの局在の関係と極めて類似していた。小壊死巣におけるカスパーゼ3、特に活性型の発現は、本形態学特徴と極めて強い関係を示した。以上より、神経膠芽腫の組織学特徴である小壊死巣と大壊死巣は、異なった機構により発生すると考えられた。すなわち、大壊死巣は周囲の腫瘍細胞がdeath receptroであるFas、DR5を発現しており、小壊死巣はカスパーゼ3の活性により特徴づけられるものと考えられた。
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