研究概要 |
鉄イオン脳内投与による外傷性てんかん実験モデルを使用した研究の結果,てんかん焦点形成に際して活性酸素種が関与することが明らかとなった.本研究では,ヒドロキシルラジカル消去剤である2-塩化アデノシン(Cl-Ado)を鉄イオン注入後長期間に渡り投与し,Cl-Adoが神経細胞の酸化ストレス(TBARS量),神経細胞の脱落,あるいは発作脳波を予防できるか否かを検討した. 1:研究概要 (1)雄Sprague-Dawleyラット(体重400〜500g)のブレグマより尾側1mm,左側方1mmの大脳皮質内に100mMに溶解したFeCl_3溶液を1μl/minの速度で5μl注入することにより,外傷性てんかんモデルラットを作成した.対照群のラットには塩酸酸性生理食塩水(pH1.8)を注入した. (2)モデルラットは4群に分け,それぞれHCl注入群,HCl注入+Cl-Ado投与群(Ado群),FeCl_3注入群(Fe群),FeCl_3注入+Cl-Ado投与群(Fe+Ado群)とした. (3)HCl+Ado群とFe+Ado群には大脳皮質内溶液注入直後にCl-Adoを2mg/kg腹腔内に投与し,以後はCl-Adoを25ppm含む水で飼育(Cl-Ado摂取量約1.75mg/kg/day)した. (4)FeCl_3溶液注入の3日,7日,1月,3月,6月後にラットの脳波変化,TBARS量を観察した. 2:研究結果 (1)FeCl_3溶液注入群のラット脳波にはスパイク活動などの発作脳波活動が認められた. (2)Fe群とFe+Ado群との間に発作脳波活動発現率及びTBARS量に差は認められなかった. (4)約33%のAdo群ラット脳波にもスパイク活動などの発作脳波活動が認められた. (3)以上の結果,今回研究に使用した量のCl-Adoでは酸化ストレスの防止に効果は認められず,発作波誘発作用もあることから,外傷性てんかん焦点形成の予防には不適であることが明らかとなった.
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