研究概要 |
脳動脈瘤内の血流に関しての臨床dataは治療上有用な情報となることが予測される。流体の圧力は一般にBernoulliの定理により1/2rV^2+P=Ptで表される。(r:液体の密度、V:液体の流速、P:靜圧、Pt:総圧、左辺第一項は動圧)。この定理を脳動脈瘤にあてはめると、靜圧は血圧である、そこで脳動脈瘤近傍の血流速度が分かれば動圧が計算され、脳動脈瘤壁への総圧が分かる。日常臨床検査としてdigital subtraction angiography(DSA)が行われ脳動脈瘤が診断されている。DSAを用いれば侵襲的な追加検査をすることなく脳動脈瘤内の血流速度壁を計算することが可能となる。本研究は脳動脈瘤患者においてDSAを用いた血流解析測定系を作成することを目的とした。結果(1)実験動脈瘤における血流測定:豚(15Kg)頚部頚動脈にvenous pouchにて実験動脈瘤を作成、100%メチルサリチル酸にて透明化し実験材料とした。ポレスチレン細粒を靜水圧100-150cmH_2Oにて還流、高速ビデオにてその動態を解析した。また同材料に造影剤を同条件で還流、DSAにて解析比較検討した。その結果DSAにおける平均通過時間と血流速度は有意に相関した(r=0.616)。DSAによる血流速度測定は信頼性のあるものと考えられた。(2)ヒト脳動脈瘤における血流測定:対象は脳動脈瘤患者29症例、合計31個の動脈瘤。秒30frameで撮影した。親動脈近位部、遠位部、動脈瘤頚部近傍、動脈瘤先端部に関心領域(ROI)を設け、造影剤平均通過時間、造影剤最高濃度時間)、造影剤消失時間を計測した。以下の各群間の差について解析した1:親動脈近位部、遠位部、動脈瘤間の差、2:動脈瘤内の場所による差(入口部、中心部)、3:急性期群と慢性期及び未破裂動脈瘤群との差、4:動脈瘤の形態による差(side wall type,bifurcation type)、5:動脈瘤の大きさによる差(small群10mm以下、large群11mm以上)。結果として以下のことが考えられた。1:動脈瘤内の血流は親動脈の血流と近似している。2:大きな動脈瘤では瘤内血流が遅延する傾向にあった。(3)Real time画像の作成:DSAを用いreal timeに動脈瘤内のflowを計測、画像化する保法を開発した。DSA装置はSimens社MULTISTAR-TOPを用いセルジンガー法にて造影剤を内頚動脈に注入。10-30frames/secで撮影を行い、これをビデオテープに記録、パーソナルコンピュターを用いて静止画像上の各ピクセルごとにtime density curveを描かせ、2コンパートメントモデルから、行列計算ソフト(Matrix Caluculator)を用いてfittingを行い、脳動脈瘤内の造影剤の計時的濃度変化を数値化、画像化した。
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