膨潤性ポリマーを用いて小動物に慢性の脊髄圧迫の状態を導入することで、急性期損傷をおこさずに慢性的脊髄圧迫と長期的な運動機能変化を来たしうることが実証された。 Wistar系列のラットを用い、術前2-3週間ラットを回転式運動量測定ケージの中に維持し、自発的運動量の基礎値を測定した。また強制的に運動させたときの運動能力を回転式トレッドミルにおいて計測した。手術は全身ガス麻酔のもとで行い、顕微鏡下に第5第6頚推部分の圧迫を作製した。手術後は回転ケージに戻して自発運動量を継続して測定、また7日ごとに回転トレッドミルにて走行持続時間を測定、急性期の神経症状が現れていない事を確認のうえ、さらに長期にわたって運動能変化を定量的に記録した。比較対照群としては、椎弓下にポリマーを通過させただけのシャム群を作製し、平行して同じだけの期間、運動機能の測定を行った。 17週以降に圧迫群に運動機能障害が出現、以後、進行した。自発運動量には圧迫群、シャム群の間に差はなかった。観察期間によって、1週間群、3週間群、9週間群、25週間群にわけ、ホルマリン還流固定し脊髄を観察した。頚髄手術部分の断面積を計測したところ、25週群でシャム群に比して11%の減少を認めた。パラフィン包埋ののち、5μm厚、5μmギャップの連続切片を300枚、3mmの長さにわたって作製、ニュウロンカウントを行った。 3週間群以降の低下を認め、26週圧迫群では、シャム群に比して34%の低下を認めた。 これらの結果は、慢性圧迫によって遅発性運動障害を再現し、その出現に先立って、運動ニュウロンの漸減を来す病態、すなわち臨床的な頚稚症性脊髄症を再現する病態モデルを作成しうることを示した。
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