変性性頚椎頚髄症は、高齢化社会において羅漢率有病率ともに大変高い疾患であり、神経外科の重要な領域となってきている。ところが、形態学的脊髄圧迫の程度と症状の発現進行とのあいだの連関がまちまちであり、圧迫が強くても、ほとんど神経学的症候を示さずに通過する例も多いことから、治療方針となると、早期手術すべきか保存的に治療すべきか一定の合意が得られない。発症、進行の病態機構を知ることが、治療方針の確定のために重要である。小動物における慢性脊髄圧迫モデルを確立して、神経細胞障害のメカニズム、ことに血管圧迫、静脈還流障害の関与を中心に検討した。ラットにすでに我々が開発して安定している方法、すなわちsublaminal chronic compressionを用いて慢性の脊髄圧迫の状態を導入し、研究を進めた。急性期損傷を起こさずに慢性的脊髄圧迫と長期的な運動機能変化を来しうることが確立している。自発運動量は圧迫開始後24週では圧迫群・非圧迫群間に有意差は認められなかったが、強制運動能力については圧迫17週後より低下し始め、進行性に減少することが確認されている。さらに血管構築の変化を重点的に検討した。特に静脈系の構築の変化が重要と思われるのでそれに注目したが、定量的詳細に関してはさらに検討が進行中である。また前角の運動ニュウロンの変化に注目して研究を進めてきたが、定量的観察では前角細胞数は圧迫開始後3週では有意な差は認められなかったが、9週後より減少するのが見られ、24週後では術前に比較し66%程度にまで減少していた。また、銀染色を用いて皮質脊髄路の線維密度および脱髄の病的変化を検討している。
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