研究課題/領域番号 |
10671317
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
入倉 克巳 北里大学, 医学部, 講師 (70176519)
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研究分担者 |
藤井 清孝 北里大学, 医学部, 教授 (10128085)
宮坂 佳男 北里大学, 医学部, 助教授 (90104538)
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キーワード | 低体温 / 酸塩基平衡 / 脳血管自動調節能 / 脳血流 / 脳虚血 / cranial window / rat |
研究概要 |
低体温療法を効果的かつ安全に行うためには低体温時脳血流、脳血管反応性がどのように変化するかを知り、病態に応じた患者管理を行うことが必要である。低体温療法下での基本的問題点の一つに酸塩基平衡管理をどう選択するかという点があげられる。本研究ではラットを用いて低体温(30℃)時酸塩基平衡管理が1.脳血管反応性、2.脳血流、3.酸素代謝および4.脳虚血周辺部脳血流に及ぼす影響について検討した。1.ラットclosed cranial window法を用いて脳軟膜細動脈をin situで直接観察した。低体温では低血圧に対する脳血管拡張反応(自動調節能)は抑制(特にpH-stat)されていたがCO2反応性は保たれていた。2.脳血流はlaser-Doppler flowmetry及び水素クリアランス法により測定した。低体温alpha-statとすると脳血流は50-60%に低下したが、pH-statでは脳血流低下は僅かであった。このように低体温時脳血管自動調節能は低下し、酸塩基平衡管理により定常時脳血流は大きく変化することが示された。3.酸塩基平衡管理により脳代謝に差が生じる可能性について検討した。全脳血流を反映する静脈洞交会血流を水素クリアランス法で測定し、脳動静脈血酸素含量差よりCMRO2を算出した。alpha-statでは脳血流、CMRO2ともに低下したがpH-statではCMRO2は低下したにもかかわらず脳血流の低下は殆ど認められなかった。pH-statでは脳血流と脳代謝がuncouplingの状態であることが示唆された。4.ラット一過性中大脳動脈閉塞モデルを用い酸塩基平衡管理が虚血巣周辺部の脳血流および梗塞巣体積に及ぼす影響を検討した。術中低体温を想定して低体温誘導するとpH-statに比べalpha-statでは有意に脳血流が低下したが、その状態で中大脳動脈を閉塞すると虚血巣周辺脳血流は同じレベルまで低下し梗塞巣体積にも影響を及ぼさなかった。中大脳動脈閉塞後に低体温を誘導した場合には酸塩基平衡管理による脳血流、梗塞巣体積の差は生じなかった。
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