研究概要 |
目的:ラット羊膜より初代培養細胞を樹立し、これを神経様細胞へ分化誘導せしめることを試みた。さらに、これらの細胞を用いて脳内移植実験を行った。方法;妊娠Wisterラット羊膜より初代培養細胞を樹立、これを10%FCS/D-MEM(以下DMEMと略す)とB27/Neurobasal Medium(以下NBMと略す)(GIBCO)の2種類の培養液を用いて培養した。培養1週間後にそれぞれの細胞を、神経細胞および神経膠細胞のマーカーに対する抗体を用いて免疫染色した。同時に、これらの細胞の細胞周期解析を、フローサイトメトリーを用いたDNA含量測定により行った。NBMで培養した羊膜細胞については、これを正常ラット脳および一過性虚血後の砂ネズミ脳海馬CA1領域に定位的に移植した。結果:DMEMで培養したラット羊膜細胞は、平板な形態を呈し敷石状に配列するが、NBMで培養すると、数本の長い突起を有する細胞質の小さな細胞が網目状の配列した。免疫染色の結果は、DMEMで培養した細胞はTyrosine hydroxylase(TH),GFAPに陽性、Neurofilament(NF)に陰性となったが、NBMではMAP-2,Synaptophysin,TH,ChAT,NFいずれも陽性、GFAPには陰性となった。細胞周期解析の結果、NBMで培養した羊膜細胞は、細胞分裂を停止することが明らかとなった。正常ラット脳へ羊膜細胞を移植すると、その後8週間にわたり生着することが確認された。さらに一過性脳虚血負荷を加えた砂ネズミの海馬CA1領域に移植した羊膜細胞はより長期間にわたり生着し、一部の移植細胞は神経細胞様に形態変化した。結論:ラット羊膜細胞は多能性神経幹細胞としての特性を有し、神経移植治療のドナー細胞となりうる可能性が示唆された。
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