1. 成猫を用いて全身麻酔下に実験を行った。脳温を37℃から25℃まで冷却し、CBF、AVDO_2、CMRO_2、脳静脈酸素飽和度(ScvO_2)、脳血管抵抗(CVR)、^<99m>Tc-albuminにて脳血液量(CBV)を測定した。その結果、脳温が31℃以下になるとAVDO_2の上昇とScvO_2の有意の低下を認めるとともにCBVの低下とCVRの上昇を認めた。これらの結果から脳低温療法が脳血管収縮を惹起しmisery perfusionからrelative ischemiaを生ずる危険性があることが判明した。このrelative ischemiaはnoradrenalinにて血圧を上昇させる事によって回避しうる事も明らかになった。以上より脳低温療法では十分に血圧を保ち脳灌流圧を保つ必要がある事が判明した。 2. 低体温から復温した猫の硬膜外にballoonを留置しICPを20-30mmHgに上昇させるとともにtrimethaphan camsylateを静注し血圧を低下させ脳灌流圧(CPP)を低下させるとCPPが60mmHgにて大脳灰白質から測定した組織インピーダンスが上昇し、水分子が細胞外から細胞内に移動したことが判明した。すなわち、低体温からの復温期には正常状態に比べ高いCPPが必要となることが判明した。今後は、組織インピーダンスとともに細胞外KおよびNa濃度を測定し、脳低温下における神経細胞膜の安定化作用についても検討する予定である。
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