研究概要 |
1.脳低温療法が脳循環代謝に及ぼす効果 脳低温療法の治療効果を検討する上で、まず脳低温療法自体が正常脳組織に及ぼす影響について脳循環代謝中心に検討した。全身麻酔下の成猫を用いて、脳温37℃から25℃まで冷却し、CFG,AVDO_2、CMRO_2、脳静脈酸素飽和度(ScvO_2)、脳血管抵抗(SVR)、脳血液量(CBV)を測定した。その結果、脳温が31℃以下になるとAVDO_2の上昇とScvO_<>の有意の低下を認めるとともにCBVの低下とCVRの上昇を認めた。これらの結果より脳低温療法自体が脳血管収縮を惹起しmisery perfusionからrelative ischemiaを生ずる危険性がある事が判明した。この虚血負荷は血圧を上昇させる事によって回避しうる事も判明した。以上より、脳低温療法では十分に血圧を保ち十分な脳灌流圧の下で施行する必要がある事が判明した。 2.脳虚血下における脳組織インピーダンス及び細胞外イオン濃度から検討した脳低温療法の効果 脳低温療法の脳保護作用について全身麻酔下のRatに全脳虚血を負荷し、脳組織インピーダンス及び細胞外イオン(K^+、Na^+)濃度変化を検討した。その結果、脳虚血負荷後には、まず脳組織インピーダンスの上昇(すなわち、細胞外容積ECSの低下であり、水分子の細胞内流入による虚血性細胞腫脹)が生じ、その後細胞外K^+イオン濃度の上昇と細胞外Na^+イオン濃度の低下が起きる事が判明した。以上により、脳虚血性細胞腫脹はNa^+イオン流入による浸透圧差による水分子の移動の結果では無く、細胞膜上の水チャネル(Aquaporin 4)の開放による事が示唆された。又、この現象は低脳温療法によって遅延される事も判明した。すなわち、低脳温療法は細胞膜チャネルの開閉に影響し脳保護に作用を発揮する事が判明した。 今後は、イオン(或は水)チャネルの開閉に影響するprotein kinaseによるチャネルのリン酸化の面から検討を加える事によって低脳温療法の増強について研究する予定である
|