研究概要 |
培養神経細胞を用いたin vitro実験系で、低温の神経保護作用のメカニズムについて検討した。 1、 <方法>(1)ラット海馬初代培養神経細胞の樹立。胎生17〜19日のラット胎仔脳の海馬から初代培養神経細胞を樹立し、培養開始後10〜14日の神経細胞を実験に用いた。 (2)グルタミン酸による神経細胞傷害。種々の濃度のグルタミン酸(10μM,100μM,1mM)を、海馬培養神経細胞に、37℃あるいは30℃で15分間負荷し、37℃条件下で24時間培養を継続した。細胞の形態学的変化を指標に生存細胞数を算定し、細胞傷害の程度を判定した。 2、 <結果>(1)グルタミン酸による神経細胞傷害。37℃の条件下で海馬神経細胞にグルタミン酸負荷を加えたところ、グルタミン酸濃度が100μM,1mMにおいて有意なものになった (2)低温による影響。30℃の条件下においても、100μM,1mM濃度のグルタミン酸負荷は生存神経細胞を有意に減少させ、その程度は37℃条件下と同様であった。 3、 <考察>グルタミン酸負荷による神経細胞死の発現は、37℃条件下と同様に30℃条件下でも認められ、培養液の低温化が神経細胞に対し保護的に作用することはなかった。今回の実験結果より培養液を低温(30℃)としても、グルタミン酸負荷による神経細胞死の発現は阻止されないことが判明した。 今後、他の神経細胞傷害モデルにおいて低温による神経細胞保護作用がみられるか否か検討する予定である。
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