研究概要 |
動脈硬化性変化、モヤモヤ病など虚血性脳血管障害による脳梗塞さらには血管性痴呆は大変大きな問題であり、その対応策の開発が望まれる。私たちは侵襲が少なく、効果的に脳硬膜の血管から虚血脳へ豊富な新生血管を誘導しうる間接的血行再建術RDPを開発し、臨床例を重ねその血管新生に関係しうる関係因子の検討を行うとともに、その血管新生機序の解明とより効果的な治療法開発を目指して実験的研究を行ってきた。 動物実験では(実験1)ラットの中大脳動脈閉塞モデルを作成し、梗塞巣およびその周辺での増殖因子(VEGF,bFGF,TGF)および血管数を3時間後から1ヵ月後まで経時的に観察した。増殖因子は免疫組織学的手法を用い、因子によって担細胞は異なるが、ともに梗塞巣辺縁部では3日目から出現し、1週間で最高になり、1ヵ月後にはより限極して認められた。血管の多寡は免疫染色した組織像を写真にとり画像解析装置を用い部位毎に測定した。1ヵ月後には梗塞辺縁部の外側に血管増殖を認め、大脳皮質より大脳基底核でより顕著であった。さらに(実験2)では、同じ虚血モデルを用い、虚血部を覆う脳硬膜を露出し、ここに硬膜切開を作りRDPのモデルとした。経時的に血管新生の有無、程度を観察し、硬膜側から虚血脳への新生血管の増殖を認めた。さらに増殖因子をフイブリン糊に混入し硬膜切開創部に塗布し、血管新生の増強効果の有無の検討を進めている。これらの結果は第1回日本細胞生物学会、11th Intenational Vascular Biology Meetingなどで報告してきた。単行本“血管新生のメカニズムと疾患"の“血管新生と治療:脳血管"を分担し執筆を進めているところである。
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