研究概要 |
アテローマ血栓性梗塞など虚血性脳血管障害による脳梗塞の進行さらには血管性痴呆は頻度も多く大変大きな問題となっている。私達が開発したRDP(deversed durapexia)は効果的に脳硬膜の血管から虚血脳へ豊富な神聖血管を誘導しうる方法であり臨床例を重ねその効果を確認している。しかしながらさらに効率良く、より確実な血管新生療法とするために昨年に続いて血管新生機序の解明と治療法の開発を目的として研究を行った。 前年度までに虚血血巣の辺縁部すなわちpenumbraの状態にある部分で血管増殖因子VEGF,bFGF,TGF-βが増加していることを経時的に観察し、また同部を中心に血管密度が増加していることもあきらかにした。今年度は増殖因子陽性細胞の単位面積当たりの数を数え、部位(大脳皮質、大脳基底殻、梗塞部)別に経時的にその変化を明らかにした。また血管密度についても局在毎にNIH imageを用いて計測し経時的に観察した。増殖因子ではVEGFが虚血7日後には最も増加し、他の2つも1日後から増加し30日後まで維持していた。血管密度は7日後には明らかでなかった30日後には増加していた。 同じ虚血モデルを作成し、さらに脳の虚血部を被う硬膜に線状切開をおいた。21日の脳と硬膜の関係を保ったままの観察では、硬膜血管から虚血脳組織に多数の血管が新生してきているのが認められた。虚血巣へ周囲脳組織からの血管新生、増加も認められたが、硬膜血管からの新生の方が著明であった。さらに同じ虚血モデル(硬膜の切開を伴った)の硬膜切開部に増殖因子VEGF,bFGFを同時に投与し、14日後に組織を検討したところさらに血管新生は強く認められた。現在血管新生療法として硬膜血管からの新生血管を得るRDP(reversed durapexia)を臨床例で行っているが、今回得られた結果はそれをさらに効率のよい方法に発展させ得ることを示唆していると考える。 これらの成果の一部は昭和大学共同研究発表会で報告し、11th International Vascular Biology Meetingで発表する。またこの成果を含めて「血管新生研究の新展開」(医薬ジャーナル社)に「血管新生療法:脳血管」として掲載された。
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