1、 巨大脳底動脈瘤に対する脳底動脈閉塞術の治療効果 脳血管モデルを作成してその回路内に模擬動脈瘤を設置し、生理的流量で潅流した。ガラス製模擬動脈瘤内に注入した色素濃度の変化は安定しており、この曲線から半減期を計算して瘤内血流停滞の指標とした。脳底動脈閉塞術にともなう瘤内血流停滞効果は、脳底動脈の閉塞部位と、左右の後交通動脈の内径比に規定される動脈瘤柄部接線方向流量とに依存することがわかり、これを定量化できた。臨床的に施行される機会が多い上小脳動脈中枢側における閉塞では、内径比が0.70以上で半減期が著しく増加した。またすでに報告されている本治療法施行例のデータを検討したところ、本研究の結果と大略一致し、この妥当性が示された。 しかし治療効果が期待できない内径比の小さい症例では、後大脳動脈P1部を閉塞させたり、バイパス路を設置することで、血行動態的に後交通動脈内径比を増加させることができると予想される。 これらの補助治療法を付加した時の血流停滞増強効果を検討中である。 2、 血行動態変化にともなう血管壁のリモデリングの検討 脳底動脈閉塞療法を施行すると、動脈瘤が存在する脳底動脈分岐部は動脈合流部に変化し、これら血行動態変化にともない著しい形態変化が出現すると予想される。そこでラットを用いて、頸部総頚動脈を露出し、その心臓側を内頚静脈に端々吻合して、頭蓋内血流を流出させるモデルを作成し、総頚動脈血流量・各部位の形態変化を研究した。 現報告時点までで、約30匹のモデルを作成した。その結果、吻合によって血流速度は10cm/sec(頭蓋方向)から20-30cm/sec(心臓方向)に増加し、血流波形も定常流に類似した。また総頚動脈分岐部は、外頚動脈内・頚動脈合流部に変化した。頭蓋内の複数の部位も分岐部から合流部に変化していると考えられるため、経時的に組織構築変化を検討する予定である。
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