研究概要 |
我々はラットにおいて中枢との連続性のない坐骨神経の遠位切断端に胎児脊髄を移植することにより,移植脊髄の運動細胞がhostの脱神経筋を再支配すること,すなわち運動単位を再建できることを世界的にも初めて観察した。これまで行ってきた胎児脊髄の直接移植においては,移植脊髄片内に神経細胞以外の間葉系組織も多く含まれており,運動単位再建の効率は必ずしも良好とは言えなかった。従って今回は胎児脊髄より神経細胞を単離培養し,その後で移植を行うことにより生着神経細胞数と再生運動単位数を増大できるかどうかを検討する。以上のうち本年度の目的は神経細胞培養システムの確立である。 (1) 胎生ラット脊髄神経組織の分散細胞培養について 妊娠14日目の親ラットよりネンブタール麻酔下に胎児を取り出した。胎児は低体温麻酔下に置かれた。胎児の背側より脊髄組織を取り出した。脊髄組織を手術用顕微鏡下に1mmの大きさに細切し,0.25%トリプシン液に浸した。その組織浮遊液に対してピッペッテイングを20から40回行った。37度にて20-30分間インキュベートした。その後組織に培養液を加え,培養を行った。結局,細胞単離・培養が不十分であった。 (2) 今後の展開について 細胞単離について,トリプシン濃度を1%に上げて,15分間室温でインキュベートするか,4度で長期間の酵素処理が必要と思われた。またパパインによる細胞単離も行う必要性もあると思われた。培養手技についても習熟が必要と思われた。
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