研究概要 |
我々は、現在までにALPには、生体内の結晶を分解する作用があること(J.Rheumatol.,1995)及び生体内でエネルギー代謝に関与している可能性があること(Eur.J.Biochem.,1995)を報告してきた。今年度は、牛や人山来のALPと種々の免疫グロブリンやアルブミンを用いたin vitroの実験で、ALPは同種のIgGやIgMなどの免疫グロブリンと結合する事、及びその事によりALP活性が高まることを証明した。 また、この現象はアルブミンでは認められなかった。更に、ALPと免疫グロブリンの結合によるALP活性の増強は、ALP活性の種々の阻害剤や増強剤を添加した条件下でも変化が認められなかった。これらの実験及び急性炎症の時に出現してくる好中球から炎症部位にphosphasomesと呼ばれるALPを含む物質が放出されることを踏まえ、ALPには生体内で免疫グロブリンと結合する事により炎症反応を押さえるような働きをしている可能性がある事を報告した(J.Lab.Clin.Med.,1998)。これらの実験結果は、今まで漫然と見られてきたALPの生物学的存在意義を考える上で極めて意義深いものであると考えている。今後は、レクチンを利用したクロマトグラフィーによりALPを糖鎖構造の違いにより分類する有用な方法を確立し、種々の異なる疾患や異なる生物学的機能を行うALPで糖鎖構造に違いがあるか否か等について追求して行く考えでいる。 1998年度は、ALPが同種の免疫グロブリンと結合する事、その事によりALPの活性が高まり、その現象は種々の異なる条件下でも同様であった事を証明した。この実験を通じ、ALPは生体内で免疫グロブリンと結合し、炎症反応を抑制するような働きをしている可能性があるという新しい生物学的機能について報告した。
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