目的 硝子軟骨由来の血管新生阻止因子であるコンドロモジュリン-I(ChM-I)について 軟骨組織を有する腫瘍で、良性腫瘍あるいは悪性の軟骨肉腫でChM-IのmRNA発現量に差があるかどうか。組み替えChM-I蛋白投与によりin vivoで腫瘍への血管新生を阻止できるかについて検討した。方法 手術時に採取した良性軟骨系腫瘍と軟骨肉腫についてChM-Iの競合PCRを行い各腫瘍のChM-I量を半定量し、それと腫瘍の病理診断とを比較した。ヒト軟骨肉腫細胞株OUMS-27とヒト軟骨細胞よりRNAを抽出し、northern blotingにより、ChM-I mRNA発現を検討した。またin vivoでのChM-Iの血管新生阻止作用を検討するためにOUMS-27をヌードマウス皮下移植モデルを作製し、腫瘍周囲にChM-I蛋白(ChM-I投与群)あるいはPBSのみを投与し(PBS投与群)、腫瘍体積を経時的に計測比較した。結果 軟骨肉腫では良性軟骨系腫瘍に比べてChM-I mRNA発現は著名な低下を示した。軟骨細胞ではnorthem blottingでChM-Iの発現を検出したが、培養軟骨肉腫細胞においてはChM-Iの発現は検出できなかった。組み換え ChM-I蛋白投与で、軟骨肉腫の増殖は強く抑制された。ChM-I投与群では腫瘍は無血管であったが、PBS投与群では腫瘍内に血管、出血が認められた。考察 軟骨肉腫は、良性軟骨系腫瘍と病理組織のみでの鑑別は非常に困難だが、本研究より、軟骨肉腫のChM-Iの発現量は有意に低く、ChM-Iの発現量の検討は良性軟骨系腫瘍との鑑別に有用である可能性が示唆された。また、ChM-I蛋白はin vitroで血管内皮細胞の抑制作用が示されていたが、本実験では、PBS投与群で腫瘍内の血管侵入を認め、ChM-Iの作用は腫瘍への血管新生を抑制し腫瘍の増殖を抑制するものと考えられた。
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