研究課題/領域番号 |
10671351
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
斎藤 直人 信州大学, 医学部, 講師 (80283258)
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研究分担者 |
江原 宗平 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (40176780)
斎藤 覚 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (20175350)
高岡 邦夫 信州大学, 医学部, 教授 (30112048)
清水 富永 信州大学, 医学部・附属病院, 助手 (40283270)
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キーワード | 骨形成因子 / 担体 / ドラッグデリバリーシステム / 生体分解性ポリマー / ポリ乳酸-ポリエチレングリコールブロック共重合体 / 骨 |
研究概要 |
骨形成因子(BMP)は生体内で未分化間葉系細胞を軟骨形成細胞、骨形成細胞に分化、増殖させ骨を誘導するサイトカインである。このBMPを注射によって生体内に作用させることができれば、骨移植が必要な骨折や骨欠損を閉鎖性に低侵襲の注射のみで治癒させることができ、臨床上きわめて有用である。しかし、BMPの溶液を生体内に注射しても拡散してしまい骨は形成されず、BMPに適した担体が必要である。BMPの注射が可能な担体として合成ポリマーであるポリ乳酸ポリエチレングリコールブロック共重合体(PLA-PEG)を開発した。全体の分子量およびPLAとPEGのモル比の異なる多数のPLA-PEGを合成し、流動性から注射が可能な数種のPLA-PEGを選定した。これらのPLA-PEGとBMPを混合してマウスの背筋内に埋入したところ、PLAとPEGのモル比が約55:45で全体の分子量が2000〜6000のものを用いると成熟した骨梁と造血性の骨髄をもつ異所骨が形成され、BMPの担体として適していた(スクリーニングテスト)。また、マウス大腿骨前面に加温して注射器で注射したところ大腿骨表面に紡錘状に骨が形成され、母床の大腿骨と完全に癒合していた。さらにイヌの脊髄前方の椎体間に注射したところ、数週間で椎体を橋渡しするように骨が形成された。これらの実験により、このPLA-PEGを担体として用いれば低侵襲の注射のみでBMPを局所に作用させ骨折や骨欠損を治療したり、注射で椎体固定が可能になることを示した。この新しい注射による骨形成の方法は臨床的にきわめて有用であり、今後は本研究で開発したPLA-PEGの実用化を目指した研究を推進する必要がある。
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