研究概要 |
自家神経移植は高い軸索誘導能を有し非常に有用な治療手段であるが、ドナー部に機能障害を生ずる、採取可能な量に限りがある、などの欠点を有する。この為同種神経の活用が試みられている。同種神経は免疫抑制剤を用いる事で自家神経移植に匹敵する軸索再生を誘導するが、免疫抑制剤投与を中止すると同種シュワン細胞は脱落し、再生神経は変性してしまう。そこで、同種、自家シュワン細胞を混合して人工基底膜と組み合わせたハイブリット型人工神経を作り、また、同種シュワン細胞に自殺遺伝子を導入する事で同種シュワン細胞のみを選択的に細胞死させ、自家シュワン細胞に置換して行く方法の確立を試みた。シュワン細胞の細胞死の機構を先ず検討したが、この研究の過程において未分化シュワン細胞がin vitro, in vivoの何れの状況でも長期間は生存せず、アポトーシスに陥ること、NGF/NGFRを介してdeath signalが生ずる事、sphingomyelin cycleを介し、転写因子NFkBの活性化により細胞死が生ずる事を明らかにした。また、同じシグナルが低レベルの発現ではシュワン細胞柱の構成に不可欠であり、NGFRの発現レベルによりシグナルのレベルが調整される事も示した。以上の結果より発想を転換して自家シュワン細胞をより長期間生存可能な状態にし、同種シュワン細胞と組み合わせて用いる事で目的を達成できる事がわかった。そこで自家シュワン細胞のNGFR発現を長期間に亘り低レベルに抑制するアンチセンス療法の開発を行った。現在有用なアンチセンスの開発に成功し、特許出願準備中である。
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