研究課題/領域番号 |
10671358
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒木 信人 大阪大学, 医学部, 助手 (10252678)
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研究分担者 |
島田 幸三 大阪大学, 医学部, 助手 (00216061)
名井 陽 大阪大学, 医学部, 助手 (10263261)
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キーワード | 骨軟部悪性腫瘍 / 遺伝子治療 / 融合遺伝子 / 滑膜肉腫 / 粘液型脂肪肉腫 / Ewing肉腫 / 骨外性軟骨肉腫 / 形質転換 |
研究概要 |
本年度の成果としては、滑膜肉腫のSYT-SSX fusion geneの解析を、既に施行した我々の症例に加え、さらに他施設の症例を用いて解析対象症例数の増大をはかった.また滑膜肉腫以外の軟部肉腫でfusion geneの判明している、骨外性軟骨肉腫、粘液型脂肪肉腫、Ewing肉腫等についてもそれぞれの症例のfugion geneの解析を行い、病理学的診断との一致を見ている.臨床症例におけるこれらの融合遺伝子の診断への利用は実用的なレベルに達してきたと考えられる.さらに、転移を伴う症例に於いても血液中の腫瘍細胞の同定方法としてRT-PCR法を用いて行い、血液中の上記腫瘍細胞の同定が可能であった.今後、治療方針の決定の為に本法を利用したstaging等に利用可能と考えられた. ついで、滑膜肉腫のSYT-SSX fusion蛋白を遺伝子工学的に産生させ、それを用いてウサギに免疫しpolyclonal抗体を得たが、これを用いた免疫組織染色、western blotting、免疫沈降を行い約60kdの大きさの発現蛋白を同定した.免疫学的に腫瘍組織での蛋白発現を実証したのは今回が初めてであり、学会での報告をおこなった. さらにこのfusion geneと腫瘍発生との関連性を実証するため、NIH3T3細胞への本遺伝子の導入を行い、形質転換を試み、in vitroでのcolony formationとinvasion asssayで腫瘍形質を獲得していることが確認された.細胞培養での細胞形態はもとのNIH3T3細胞に比し、変化しており、また、ヌードマウスにこの腫瘍を移植しin vivoでの造腫瘍性も確認し得た.その病理組織像はヒト滑膜肉腫に類似した像をしめしていたが、さらに免疫組織染色等によりこれらのfugion geneによる形質転換細胞を解析する必要がある.また現在、このfugion geneによる形質転換細胞を用いてin vitroにおけるanti-sense oligonucleotideの投与を行い、数%の腫瘍増殖抑制効果を得ており、本研究の課題であるfusion geneを用いた遺伝子治療の開発に向けて非常に有望な結果がえられた.
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