遊離筋肉移植の術後経過における成長因子、特に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の関与を検討することを目的として実験を計画した。 実験動物にはWister系雄ラットを使用し、筋肉移植のモデルには下腿三頭筋を用いた。まず予備実験として、下腿三頭筋の血管、神経を含めた局所解剖を行い、筋肉移植としての妥当性について検討した。その結果、膝窩動静脈を血管茎として下腿三頭筋を挙上することが可能であり、坐骨神経を運動神経とする遊離筋肉移植モデルとして使用できることが判明した。すなわち坐骨神経は大腿中央で切離し、また血管はクリップで一時的に血行を遮断した。神経の切離は神経外膜の一部を残して行い、直ちに10-0ナイロン糸にて縫合した。また虚血時間は1時間で設定し、その後血管クリップを解除した。 モデルは術後早期のものから、12週の長期のものまでを作成予定であるが、現在までに中長期モデルとして10匹を作成した。実験部位の感染や術後死亡したラットはなく、安定したモデルが作成できることを確認した。遺伝子発現の解析についてはそのための試薬や市販のキットを準備し、安定して確実な解析ができるように手技について習熟中である。 今後は、経時的な筋肉移植モデルを引き続き作成するとともに、実際の検体についての遺伝子解析を行う予定である。
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