研究概要 |
前年度に確立したWister系雄ラットを用いた、筋肉移植モデルを、平成11年度にかけて引き続き作成した。すなわち、膝窩動静脈を血管柄、坐骨神経を運動神経とする腓腹筋を剥離、挙上して筋肉移植モデルとした。筋肉の血行を、血管クリップにて一時的に遮断した後に腓腹筋をorthotopicに移植した。術後4、6、8週で、ネンブタール麻酔下に、手術側および健側の腓腹筋を採取し、エタノール処理を行った後-80℃にて凍結保存した。 保存した検体について,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のmRNA発現を、RT-PCR法を用いて解析した。各検体からtotalRNAを抽出し、bFGFmRNAの発現の経時的変化について検討した。その結果、筋肉移植モデル内のbFGFmRNAの発現は、術後経時的に変化していることが判明した。すなわち術後4週の時点では筋肉内にbFGFの発現が認められるものの、6週以後は急速に消失していた。従って、bFGFは筋肉移植術後比較的早期に発現し、筋肉内の神経再生の時期と一致していることから、筋芽細胞の再生など脱神経変化に陥った筋組織の回復過程に関与している可能性が示唆された。 今後の展望として、術後早期のモデルも作成し、より早期からのbFGF発現の変化についてさらに詳細な解析を行い、筋芽細胞の再生への関与について検討する必要がある。
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