通常の条件で飼育したSHR(12匹)と離乳期から頻回に起立させる飼育条件(高ケージ飼育)のWKY(12匹)の大髄骨頭の軟X線撮影、HE標本作製を行い両者の比較検討を行った。成長期の骨端核に限局し、高頻度に発生した無血管性壊死が両者の共通点であった(SHR46%、WKY33%)。しかし、X線所見でほとんどのSHRに骨頭の扁平化やhorizontal growth pateが存在し、WKYには認められないなどの相違点もみられた。また、SHRでは組織学的に大髄骨頭の骨化障害の発生頻度が有意に高く(SHR46%、WKY4%)、骨頭外側部のRanvier zone付近の成長軟骨帯の異常の程度も高度であった。以上よりラットの大髄骨頭壊死は、軟骨の構築学的強度よりも相対的に強い機械的ストレスが大髄骨頭外側部に加わった場合に発生すると考えられた。 実際に高ケージ飼育下にWKYがどの程度起立しているかを赤外線ビデオを用いて調べた。生後6週時に1日に2時間程であり、成長とともに漸減し、生後15週時は1時間程であった。 生後5週から高ケージで飼育したWKYに成長期のどの時点で骨頭壊死が発生するかを調べるため生後9週、12週、15週、20週時にそれぞれ10匹ずつ屠殺した。HE染色標本を作製し、壊死の有無、壊死の修復状態を調べた。壊死の発生率はそれぞれ0%、15%、33%、25%で、修復のない新鮮壊死は、12週、15週のみにみられた。また、起立期間の関与を調べるため、生後5週から9週まで起立できない低ケージで飼育したあと、高ケージに移した10匹と生後5週から12週まで低ケージで飼育し高ケージに移した10匹を15週時に屠殺した後、HE染色標本作製した。40骨頭中骨壊死は、1骨頭に認められたのみであった。以上から生後5週から12〜15週にかけて骨頭の加わる機械的ストレスが骨頭壊死発生に関与していると考えられた。
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