研究概要 |
老化にともなう椎間板変性の過程の詳細な機序は明らかにされていない。本研究では老化の機序を解明することを目的に椎間板変性過程におけるTGF-βやBMPの発現と局在を明らかにし、その役割について検討した。 本年度は週令4週、8週、16週、24週、32週、50週の老化促進マウス頚椎椎間板を摘出し組織学的観察とBMP,及びBMP受容体の発現と局在の観察を行った。頚椎椎間板は組織学的には既に生後32週で髄核組織の減少や線維輪の断裂およびアミロイド様物質の沈着などの所見がみとめられ、50週ではこれらの所見にくわえて椎体のenthesis部分での骨性隆起が認められた。BMP-2/4は、生後4週から24週までは髄核組織や椎体終板の軟骨組織に広く存在しており、これに一致してI型(IA,IB)およびII型BMP受容体の存在も確認された。しかし、椎間板の変性が生じる生後32週では、BMP-2/4とI型(IA,IB)およびII型BMP受容体は髄核や椎体終板にはあまり存在しておらず、むしろ椎体のenthesis部分の軟骨細胞に強く発現していた。 本研究で観察された所見は椎間板の変性過程においてBMP-2/4の役割が変化している可能性を示唆している。生後32週までにみられたBMP-2/4は軟骨の成長と機能維持に関与していると考えられるが、成長が終了し加齢変性が進む過程ではおいては椎体enthesis部分での骨棘形成などに関与していると思われる。次年度は、BMPと同様に重要なサイトカインであるTGF-βの椎間板での局在の変化を観察する。
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