研究概要 |
平成10年度は、棘下筋腱を腱の停止部近傍の非石灰化線維軟骨層で切離し元の場所にもどす非石灰化線維軟骨層逢着モデルと、切離した腱を石灰化線維軟骨層に逢着する石灰化線維軟骨層逢着モデルを作製し、腱の骨への停止部の修復を組織学的に観察した。両モデルの作製にそれぞれビーグル犬5匹(10-15kg)を用い、腱縫合を4 strand Savage法(2-0 Ethibond)で行なった。術後、犬をケージ内で飼育し、経過観察期間3,6,9,12,16週で各1匹ずつ屠殺し骨付きの腱標本を採取した。採取した腱をホルマリン固定し、脱灰後にHE染色、Azan染色を行い、偏光顕微鏡下で腱より骨に向かって再生するコラーゲンの構造を、経過を追いながら観察記録した。 非石灰化線維軟骨層逢着モデルでは術後6週で新生コラーゲン線維が残存している非石灰化線維軟骨層に連結し始め、術後12週ではコラーゲンが成熟を開始した。術後16週では4層構造のdirect enthesisがほほ完成した。腱と非石灰化線維軟骨層を連結する線維性結合組織の細胞は主に腱断端及び周囲の新生血管より供給される像を示した。Tide markを越えた骨からの血管の新生は認めなかった。石灰化線維軟骨層逢着モデルでは術後6週までは新生コラーゲン線維の発育が少なく、石灰化線維軟骨層の表面との連結が粗であった。術後12週では新生コラーゲン線維が石灰化線維軟骨層の表面に連結した。術後16週で初めてコラーゲン線維が石灰化線維軟骨層の骨組織に軟骨層介さずに侵入している像が観察された(indirect enthesis)。Tide markを越えた骨からの血管の新生は認めなかった。 以上の結果より、逢着された腱は非石灰化線維軟骨層の表面に連結し易く、早期よりdirect enthesis構造を再生した。これは、線維軟骨層の表面が足場となって腱が逢着し易い何らかの機序が働いているものと予測された。一方、鍵は石灰化線維軟骨層に接続し難く、これは露出している石灰化線維軟骨層が腱の接続を妨げている可能性を示唆した。今後、骨髄内逢着モデル、骨皮質逢着モデルを作製する予定である。
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