研究概要 |
エンテーシスは筋肉が生み出す力を腱を介して骨へ伝達する重要な部位であり、腱のコラーゲン繊維が線維軟骨を介して骨に連結している。しかし、損傷したエンテーシスが修復される課程を詳細に観察した報告は少ない。我々は、1997より解剖学的に特殊な構造を持つエンテーシスの修復に関する研究を開始した。その結果,腱の断裂端を骨に逢着した場合、腱より骨へ至るコラーゲン線維は骨側の縫合面の状態により異なって再生することが明らかにされた。つまり、骨側に腱の断端が残存している場合は、コラーゲン線維は腱の断端を介して骨に連結した。骨側の表面が石灰化線維軟骨の場合は、骨へのコラーゲン線維の連結が遅れた。骨側の表面が海面骨の場合は、肥厚した骨梁にコラーゲン線維が強固に連結した。この事実は,臨床的に行われている腱を海綿骨に縫着する手術手技が、確かであることを証明している(J Shoulder Elbow Surg,2001,in press,他)。さらに、我々は新生コラーゲン線維が骨に連結して修復する課程を詳細に観察する目的で、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。その結果、骨梁への新生コラーゲン線維の連結は、術後2週でコラーゲン線維と線維骨とが同時期に形成されることより始まった。術後4週でコラーゲン線維は配向性をもつ線維束となり繊維骨および骨梁に連続し、術後6週でコラーゲン線維束は密になり肥厚した骨梁と連結した。これは、骨へのコラーゲン線維の連結を解明した初めての報告である(J Orthop Res,2001,in press,他)。これまでの動物を用いた研究で、我々は骨と腱が結合する状態を組織学的に観察してきた。その結果、良好な血流と適度な張力が加わった場合、腱や靭帯は骨と良好に結合することが明らかにされた。今後必要な実験は、欠損した腱板を再建する理想的な方法を考案することであろう。
|