日常生活動作で生じる荷重骨に与えられた動的歪みと電気的信号との比例関係および骨組織のインピーダンスから逆算して、骨の恒常性維持に関与する圧電位を推定し、発生する微小電流を生じさせるに必要な変動磁場を骨組織に繰り返し負荷し、変動磁場により生じる骨組織の電流の伝播と方向性をSQUIDにより計測することにより、非侵襲的なSQUIDによる骨組織の強度および骨折治癒過程での仮骨強度判定を確立することを目的として研究を行ってきた。 【実験:骨インピーダンスと骨内電流の解析】 体重1000g前後の雄成熟家兎10羽の右脛骨に対して創外固定期を用いての約1.0cmの仮骨延長を行い、交流刺激装置を用いて仮骨形成の促進を行い、骨形成特にremodellingを促進することが明らかになった。また、兎の脛骨を摘出する際に皮膚組織、皮下軟部組織を除去してオシロスコープを用いて骨組織だけのインピーダンスを計測した結果、その値は70〜80Ωであることがわかった。また全体の抵抗値は皮膚組織、皮下軟部組織を除去する前より低下しており、このことは骨組織よりむしろ軟部組織に電流が流れており、ピン刺入部周囲の瘢痕組織が抵抗値を高めていることがわかった。骨組織内を電流が流れなくても電流が仮骨成熟促進に関与することが明らかになった。 現時点では軟部組織の影響、特に筋組織のインピーダンスが低いため、負荷磁場は骨組織を経路としていない可能性が高いため、実験的に一定の低電流を流す交流装置を用いて兎の脛骨仮骨に負荷に仮骨組織のインピーダンスや電流刺激経路の研究を行っている段階である。今後さらに電磁場や電流刺激による仮骨形成の促進やその機序を含めて骨組織の恒常性維持の制御に関し、電気的側面から研究を続ける予定である。
|