今回、我々は端側神経吻合という外科的操作によって生じるとされる神経再生のメカニズムを免疫組織学的に検討した。 実験はFisher系ラット15匹の右足を端側神経縫合モデルとして、左足をそのコントロールとして行った。右足の内側腓腹筋への筋枝をその基始部より切断し、その遠位をrecipient nerveとして用い、その遠位端をdonor nerveである外側腓腹筋への筋枝に移行した。神経を移行する際、神経軸索の損傷を予防する目的で、固定材料としてシリコンチューブを用いた。 術後3日、一週間、二週間において神経再生の評価を行った。 水平断の神経接合部の標本を作成し、各種抗体を用いて評価した。GAP-43は神経成長円錐の指標として、またBDNFとNT-3は神経誘導因子、Trk BとTrk Cは神経誘導因子のレセプターとして用いた。 結果として術後3日目の神経接合部においてNT-3の著明な集積が認められたのち、術後7日目には神経接合部のdonor nerve側にGAP-43の発現が認められた。また、術後14日には神経接合部より遠位の内側腓腹筋筋枝内でGAP-43の発現が認められた。それに対して全期間を通じてコントロール側でのGAP-43とNT-3の発現は認められず、BDNFとTrk Bについては手術側とコントロール側の間に明らかな違いは認められなかった。 本実験の結論として、無傷のdonor nerveからrecipient nerveへのcollateral sproutingが認められ、その発芽の際には神経誘導因子が関与していることが考えられた。 平成11年度は、同じモデルを用いてCAT活性(Choline acetyltransferase activity)測定を行い、神経再生の評価を検討する予定である。
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