研究概要 |
ラットを用いて腰部脊髄神経根(L4,5)上に尾椎より摘出した髄核を留置することにより発現する神経因性疼痛の指標である痛覚過敏に白血球、トロンボキサン(TX)、ロイコトリエン(LT)、シクロオキシゲ-ナ(COX)が関与するかどうかを検討した。神経根性に自家髄核を留置することで圧刺激に対する痛覚過敏が出現し、神経根周辺には炎症性肉芽組織の形成が見られた。Nitrogen mustardの静脈内投与による白血球減少ラットでは圧刺激に対する痛覚過敏の発現はみられず、神経根周辺の瘢痕組織に炎症細胞浸潤は少なかった。L4-5レベルに硬膜外カテーテルを留置し、溶解剤、TXA_2合成酵素阻害剤、LTB_4受容体拮抗剤、COX-2特異的阻害剤をそれぞれ髄核移植後7日目に投与した。TXA_2受容体拮抗剤、COX-2特異的阻害剤をそれぞれ髄核移植後7日目に投与した。TXA_2合成酵素阻害剤、LTB_4受容体拮抗剤、COX-2特異的阻害剤は投与後早期には溶解剤投与群に比し、有意な変化はみれらなかったが、硬膜外投与後1週目ではいずれも痛覚過敏の有意な改善が得られた。また、組織学的に観察すると、これらの拮抗剤投与群では神経根周辺には炎症細胞浸潤が軽度であった。熱刺激に対する感受性変化は認められなかった。硬膜損傷を作成したラットではCOX-2特異的阻害剤の投与により下肢運動麻痺の出現がみられた。アラキドン酸カスケードの代謝産物であるTXA_2、LTB_4ならびにアラキドン酸からプロスタグランジン産生に関与するCOX-2が髄核による疼痛発現に関与する可能性があり、神経根周辺の炎症反応に関連することが判明した。この研究の目的は椎間板ヘルニアによる疼痛機序を詳細に検討することにあるが、新しい薬物療法を開発につながる可能性もある。
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