研究概要 |
胸椎の後縦靭帯骨化症(ossification of the posterior longitudinal ligament.OPLL)における脊髄除圧操作時における胸髄障害発生の最大原因は.狭小脊柱管内で抵抗力が減弱した脊髄に密接して後縦靭帯骨化巣除去あるいは移動操作(OPLL操作)を行うことである.その様な状態でのOPLL操作は必ずある程度の障害力を脊髄へ及ぼし,その程度が脊髄の抵抗力を越えれば脊髄障害が発生する.脊髄の抵抗性を術前に知る方法はなく,またOPLL操作がとの程度の力を脊髄に及ぼすかを知る方法もない.最も脊髄が安全な方法はOPLL操作前に脊髄をOPLLから後方に遊離させ(脊髄後方遊離法),脊髄抵抗性の回復を待って二期的に必要なOPLL操作を行うことである. 解剖学的研究により,胸椎後縦靭帯骨化症における胸髄後方移動阻害因子に縦および横方向の2因子が存在すること,および両因子の外科的除去法を解明した.縦方向因子は矢状面上胸髄より前方に位置する他の脊髄部分による胸髄前方牽引作用であり,それらの脊髄部分の後方移動を可能にする広範囲後方除圧と硬膜後方切開で除去可能である.横方向因子は胸神経根・歯状靭帯の胸髄前方係留効果である.胸神経根・歯状靭帯の後方移動が硬膜前方部分の伸展性障害と椎間孔性絞扼により阻害されると,両者は胸髄を前方に係留する.この因子は椎間孔開放術と硬膜前側方剥離〜切開で除去可能である. 胸椎後弯頂点部における胸髄後方移動可能度(神経根〜神経根動脈に無理な変形を発生させない範囲)は,日本人成人で7mm程度と考えられた.
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