研究概要 |
ヒト骨組織より初めてChondroadoherin(以下CHAD)を分離、精製する方法を確立し、これまでに報告されているウシのCHAとの比較検討を行った。 (方法)ヒト新鮮屍体より採取した、皮質骨・海綿骨を、それそれ液体窒素を用いて凍結粉砕し、0.5MEDTA Tris bufferで、脱灰抽出を行った。抽出液をCM52イオン交換クロマトグラフィーを用いて、0から0.5MNaClのlinear gradientで分画したCHADを含む画分を、phenyl-TSK-5PW/reverse phascカラムを用いて精製した。 (結果)ヒト皮質骨・海綿骨、およびウシ皮質骨の脱灰抽出液を還元条件下でSDS-PAGEに展開したところ、ヒトでは36,37kdの蛋白質が、ウシに比べて多量に抽出された。精製画分のアミノ酸分析の結果、精製された36,37kDaの蛋白質はCHADであることが証明された。CHADのリン酸化の有無についての検討では、ヒトおよびウシ骨由来のCHADにphospho-Serが存在していたが、軟骨由来のCHADには、リン酸基は認められなかった。 (考察)ヒトの皮質骨および海綿骨から分離、精製したCHADは、ウシ軟骨由来のものと同一の一次構造を示したが、リン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾に関しては、明らかな相異がみられた。すなわち、骨由来のCHADにのみリン酸化修飾がみられたことは、本蛋白質が骨、軟骨のそれぞれの組織において、固有の翻訳後修飾を受けることにより、異なった機能を有して存在する可能性があるものと推察された。現在、精製蛋白質に対するモノクローナル抗体を作製中であり、抗体が得られ次第、代謝マーカーとなり得るかの検討をヒト血清を用いたELISA法により行う予定である。
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