申請者のグループは、当研究室における一連のムチランス型リウマチの発生機序に関する研究成果を詳細に検討し、且つ、研究の予備段階から抱いていた以下についての疑問、すなわち、(1)ムチランス変形の速度は急速に進行する時期と緩徐な時期があり一定の速度で推移するものではないのではないか。(2)ムチランス変形を呈する患者であっても全ての関節が一様の変化を示すのではなく、骨硬化像を呈する場合もあり得るのではないか。(3)ムチランス変形の発生機序を局所のサイトカイン濃度が高いというだけで説明することは不可能ではないか。 以上の3点を更に考慮し、現在も研究は進行中である。そして、我々は本期間中に以下の結果を得た。(a)ムチランス部位より採取した滑膜細胞の培養開始一週後、培養上清を採取し濃縮後セファデックスG-15カラムにてゲル濾過し、分子量勾配に従って再び採取したサンプルを準備した。象牙片上に培養した破骨細胞に準備したサンプルを添加し、吸収孔形成への影響を測定したところ、コントロールと比較し有意に骨吸収が亢進した。(b)吸収孔形成の促進作用が認められるサンプルチューブを電気泳動法にかけ、含有する物質の分子量を確認したところ、1kDの破骨細胞活性化機能を有する活性蛋白質を確認した。(c)DE52カラムを用い、電気極性にてさらに含有蛋白を細分化し精製した後再度破滑細胞培養系に添加し、破骨細胞活性化作用を確認した。 以上の結果、我々は、ムチランス部位より採取した滑膜組織中より破骨細胞活性化作用を有し、約1kDの分子量を持つ活性蛋白質の分離に成功し、この因子の作用はIL・1RAや抗GP130中和抗体等の破骨細胞活性化サイトカインの阻害薬で抑制を受けなかった。これらの事実より、ムチランス型急速骨吸収はこの活性蛋白質の発現による破骨細胞活性化を介して発生する可能性が示唆された。
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