PKC・c-fos遺伝子カスケードの軟骨変性に及ぼす影響とその治療応用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10671393
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 濱西 千秋 近畿大学, 医学部, 教授 (00164921)
• 研究分担者: 宮城 一郎 近畿大学, 医学部附属病院, 助手 (30288906)
• キーワード: 関節軟骨 / 軟骨細胞 / PKC / c-fos / 変形性関節症

研究概要

本研究では二次的細胞内伝達系であるプロテインカイネースC(PKC)系、さらには三次的伝達系である核内c-fos遺伝子の発現に焦点をあて、それらが単独であるいは共同して慢性的な軟骨破壊につながるカスケードの出発因子となり得るかを調べること、さらにはそれらの抑制、あるいは刺激が変形性関節症の発症や進行に及ぼす影響を観察することにより、将来の臨床的な変形性関節症の予防法あるいは治療法を開発することを目的とした。
そして初年度として平成10年にはまずラットおよび家兎を用い,靭帯切離・半月板切除を行い変形性関節症モデルを作製し、PKC舌性化物質であるTPAの関節内注入実験を行い関節症の発生・進行阻止につながるPKCの賦活状態を明かにした。また関節症で存在が明かとなっているα・ε-PKCのいづれが関節症の阻止に重要であるかを個別の賦活実験より解明するために抗c-Fos抗体を用いた免疫染色を行い、in vivoにおけるc-Fos蛋白の発現を観察し、α・ε-PKCの負荷・抑制が及ぼす影響を調べた。
【結果】1.ラットにおいても再現性のある変形性関節症モデルを確立しえた。2.TPAの関節内注入によって変形性関節症の発生と進行がいずれも防止できた。3.TFAの関節内注入によってc-Fos蛋白発現が有意に抑制されていた。4.TPAの関節内注入によってε-PKCが活性化されていた。これらよりTPAの関節内注入によりε-PKCが活性化され、c-fos遺伝子発現の抑制が軟骨細胞の成熟化を促しプロテオグリカン合成を刺激し、軟骨が保護され変形性関節症が防止されたことが示唆された。これらを日本整形外科学会基礎学術集会English Session(1998.9.25名古屋)などで発表し、数編の英文論文としてまとめた。

研究成果

• [文献書誌] Miyagi I,Kikuchi H,Hamanishi C,Tanaka S: "Auto-destruction of the articular cartilage and free radical mediators" J.Lab.Clin.Med. 131. 146-150 (1998)
• [文献書誌] H.Satsuma C.Hamanishi M..Hashima S.Tanaka: "Immunohistochemical localization of cartilage-specific and non-specific proteoglycans in experimental osteoarthritic articular cartilage in rats" Advances in Osteoarthritis,Springer Verlag. 142-150 (1998)
• [文献書誌] C.Hamanishi H.Miyazaki H.Satsuma S.Tanaka: "Protein kinase C-activator inhibits progression of osteoarthritis by inhibiting c-Fos protein expression in articular chondrocytes" Advances in Osteoarthritis,Springer Verlag. 174-184 (1998)
• [文献書誌] M.Hashima C.Hamanishi S.Tanaka: "Muscarinic receptor-mediated Ca++control,protein kinase C activity and proteoglycan release and synthesis in articular chondrocytes" Advances in Osteoarthritis,Springer Verlag. 48-55 (1998)
• [文献書誌] S.Tanaka,C.Hamanishi: "Advances in Osteoarthritis" Springer-Verlag, 298 (1998)