研究概要 |
平成10年度の検討により,変形性関節症の発症にプロテインキナーゼC(PKC)・c-fos遺伝子カスケードが関与することがin vivoで明らかにされた.平成11年度はこの現象をより詳細に検討することを目的に,in vitroでの実験を行った.具体的には,培養細胞に周期的牽引負荷を加え,その代謝の変化を検討するとともに,PKC・c-fos遺伝子カスケードの上流に位置するGTP結合蛋白質と近年生理活性物質として注目されている一酸化窒素(NO)の関係に注目した.機会的ストレスによりNOは二相性の反応を示した.すなわち強いストレスではNOの産生は低下し,弱いストレスで逆に亢進した.我々は,この強いストレスによるNO産生を検討し,その調節因子としてGiが関与することを見いだし報告した(J Orthop Res,1999;17:593-7).これは,機会的ストレスの細胞応答として,PKC・c-fos遺伝子カスケードにGTP結合蛋白質が関与することを示唆する結果である.さらに,最近変形性関節症の発症機序として注目されているアポトーシスの制御機構についても検討した.我々はこれまでにも各種ガスメディエータと軟骨代謝の関連について検討してきたが,平成11年度は過酸化水素が軟骨細胞のアポトーシスを誘導し,この機構にPKC・c-fos遺伝子カスケードの上流に位置するmitogen activated protein kinase(MAPK)が関与することを見いだし報告した(Inflamm Res1999,48:399-403). 以上の理由により,本研究は順調に進捗していると考えられる.
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