股関節臼蓋唇の切除が臼蓋の発育に及ぼす影響をしらべるために、ニホンザル幼獣10例の片側の臼蓋唇を塩酸ケタミンによる麻酔下に無痛性に切除し、経過を観察中をおこなった。臼蓋唇の切除部位は四足歩行のサルにとって荷重部となる臼蓋背側の臼蓋唇を切除し、対側の股関節は無処置としてコントロールとした。切除した臼蓋唇はHE染色を行い組織学的に検索し硝子軟骨を含まずに切除されたものをA群(5例)、硝子軟骨を含んで切除したものをB群(5例)とした。 これらの個体に対し経時的にレントゲン撮影を行った。レントゲン撮影は股関節90゜開排位にて行い、臼蓋の背側の臼蓋唇切除部が観察しやすくなるように、通常の股関節正面像に加えて頭側、尾側に30゜角度をつけての撮影を合わせた三方向の撮影を行なった。それらについて臼蓋角(Acetabular angle)、Acetabular Index、臼蓋外側縁傾斜角(Acetabular edge angle)、WibergのCE角の測定を行った。 平均経過観察期間は35.4ヶ月、最長経過観察期間は52ヶ月、最短経過観察期間は29ヶ月である。 その後、全例、麻酔薬の大量投与にて安楽死させ標本を摘出、肉眼的観察及び、大腿骨頭、臼蓋の径、臼蓋唇、大腿骨頭靱帯の長さや幅などについて計測をおこなった。 レントゲンによる観察ではB群の一例を除き、明かな変化はみとめられなかったが、摘出標本の肉眼的所見では臼蓋軟骨まで切除したB群に一部の個体で臼蓋の拡大をみとめた。現在、摘出標本のレントゲン撮影を行っており、再度、レントゲン計測による評価を行い、その後、組織学的検索を加えデーターのまとめを行なう予定である。
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