研究概要 |
吸入麻酔薬がの麻酔作用に関する部位として中脳以下の脊髄神経が麻酔薬MAC決定に重要な役割を担っていることが明らかとなった。脊髄後角のどの受容体が最も重要な役割を果たしているのかについて研究を行い以下のことを明らかにした。1)脊髄におけるNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体が重要な役割を果たしていて、NMDA受容体の競合的拮抗薬(APV)、非競合的拮抗薬(MK801),glycine binding site拮抗薬(7CKA)のくも膜下投与でイソフルランのMACが低下し、この低下は受容体作動薬投与で元に戻る。2)脊髄のNeurokinin-1受容体も重要な役割を果たしていて、Neurokinin-1受容体拮抗薬(CP-96345)をくも膜下投与するとイソフルランのMACが低下し、作動薬であるサブスタンスpの投与で元に戻る。3)metabotropic NMDA受容体、AMPA受容体は麻酔薬MACの決定に関与しない。4)NMDA受容体拮抗薬とNeurokinin-1受容体拮抗薬の同時投与は効果を増強するが、相加的であって相乗的ではない。 派生した実験としてはNMDA受容体のチャンネル部分をブロックするMgをくも膜に投与しても脊椎麻酔とはならないことを証明した。Mgをくも膜下に投与すると脊椎麻酔となるという報告がなされた。しかしくも膜下のMg投与により、1)Somatosensory Evoked Potentialは変化しない。2)機械的刺激による疼痛閾値は変化しない。3)hot plate試験の逃避潜時は変化しない。4)ホルマリン試験で急性期の足上げ運動には影響しなかった。 これらのことよりMgのくも膜下投与で脊椎麻酔とはならないと結論した。
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