体外循環を使用した心臓手術患者29名(冠動脈バイパスグラフト患者14名、弁置換患者15名)を対象とし経時的に、循環動態を評価し、肝静脈血酸素飽和度(ShvO2)、胃粘膜pH(pHi)、動脈・肝静脈エンドトキシン濃度を測定した。麻酔導入後心係数は2.6±0.3L/min/m2であった。体外循環は低温下に2.3±0.1L/min/m2で行った。術後心係数は上昇し、ICU入室時3.3±0.6L/min/m2、ICU24時間後3.4±0.7L/min/m2と安定し全身組織酸素供給は正常に保たれていた。ShvO2はCPB60分後88.3±3.3%と著明に上昇し、CPB終了前復温時に40.2±5.6%と著明に低下した後再び上昇した。動脈血ケトン体比はCPB30分後0.28±0.13、CPB終了前0.45±0.15に低下したが、手術終了時正常範囲に復した。pHiは、麻酔導入後7.446±0.05、CPB60分後7.559±0.1と高値を示したがCPB終了直前より低下を示しICU入室時は7.223±0.01と著明に低下した。以後pHiは上昇しICU24時間後に正常下限とされる7.32をこえた。動脈血及び肝静脈血エンドトキシン値はCPB中10pg/ml以下で経過したが、術後から術後第1日目に上昇傾向を示し術後2日目に低下した。各測定ポイントにおいて動脈血・肝静脈血濃度較差に有意差を認めなかった。低温体外循環を使用した心臓手術周術期には腹腔内臓器潅流低下が示唆される。
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