吸入麻酔下の動物に気道閉塞を負荷すると麻酔深度と運動反応(合目的体動)(Airway Occlusion Response ; AOR)の間に一定の関係が得られ、MACが定義できることを証明し、MAC_<AOR>の概念を提唱した。今回の研究ではMAC_<AOR>の特徴あるいは規定因子を明確にした、 すなわち呼吸調節に関与する求心性情報のうちAORに影響を及ぼす因子を動物実験で解明し、気道閉塞により誘発されるRespiratory Distressの発症機序を一部明かにした。本研究ではRespiratory Distressの強度の指標としてMAC_<AOR>に加えD_<OCCL>(Duration of the airway occlusion)を用いた。DOCCLは合目的体動の出現する最高のイソフルラン濃度を定め気道閉塞から合目的体動が出現するまでの時間である。MACAORの減少およびDOCCLの延長はRespiratory Distressの緩和を意味する。 1)肺内受容器のうちの伸展受容器からの求心性情報がAORにおよぼす影響を肺容量増加と利尿剤であるフロセミド吸入により研究した。どちらも肺伸展受容器活動を高めRespiratory Distressを緩和することが示唆された。 2)胸壁のproprioceptorsすなわち肋間筋の筋紡錘や腱紡錘、肋骨胸椎関節からの求心性情報がAORにおよぼす影響を調べるため、胸部硬膜外麻酔を施行しMACAORおよびDOCCLを検討した。胸部硬膜外麻酔はRespiratory Distressを緩和する効果があるがこれは吸収された局所麻酔の中枢効果によるもので神経ブロックによる求心性情報の遮断そのものはRespiratory Distressを憎悪させることが示唆された。
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