研究概要 |
本年度は、初めは熱刺激によるデータを集める予定であった。しかし,なかなか安定したデータが取れず,試行錯誤することとなってしまった。本年度の過換気誘発鎮痛機構に関する研究についての結果は以下の3点である。 1.NMDA受容体拮抗薬であるAP5前処置の結果は,単独では有意な抑制を起こさず,又過換気の脊髄後角細胞活動抑制効果に有意な影響を及ぼさない。 2.過換気により抑制された脊髄後角細胞活動は、AP5髄腔内投与によりさらに有意な抑制を生じた。 3.臨床的に,鎮静度モニタを使用して静脈麻酔中に過換気が麻酔に何らかの影響をもたらすかを検討し,手術時の鎮痛薬の追加投与までの時間を有意に延長することを証明した。 以上の研究結果については現在,論文として作成中である。 来年度の予定としては,まずmethysergideの全身投与により過換気の効果に対するセロトニンの関与を検討する予定である. 次は,AP5の結果をNMDA受容体への効果であることを証明するためMK-801を投与してその効果を検討する予定である。その後は,非NMDA受容体について検討したい. 又,臨床実験については,今回の研究結果をふまえて,過換気の鎮痛効果について異なるプロトコールを用いて検討する。又,逆に鎮痛薬を一定とすることで,鎮静薬の量に過換気が影響を及ぼすか検討したい。又,今回の動物実験より,NMDA受容体拮抗薬であるケタミンが臨床においても過換気の鎮痛効果を増強する可能性が生じたのでこれもあわせて検討したい。
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